カフ・オシロメトリック法による精度の優れた自動血圧計が開発され,非観血的に15-30分間隔で24時間自由行動下血圧測定(Ambulatory Blood Pressure Monitoring:ABPM)することによって診察室以外の血圧情報が得られ,24時間にわたる血圧プロフィール,24時間,昼間,夜間,早朝などの限られた時間帯における血圧情報が得られるようになった。ABPMの普及に対し,本邦でも『24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン』が刊行されている。通常,血圧は覚醒時に高値を示し,睡眠時に低値を示す。また,多数の測定値が得られることにより,自動血圧計で24時間高頻度に測定した血圧値の平均値の方が診察室血圧よりも,高血圧性臓器障害の程度とより相関していること,および治療による臓器障害の抑制・改善とも密接に相関していることが示されている。また,一般集団,高齢者集団あるいは高血圧集団において,ABPMは診察室血圧以上に心血管病発症を予測できる。 ABPMは白衣高血圧の診断に特に有用であり,白衣高血圧が疑われる例およびコントロール不良高血圧,治療抵抗性高血圧の診断に適応となる。ABPMによる正常血圧の定義はなされていないが,本邦の18歳から93歳までの正常血圧者634名においてABPMを測定した24時間平均値±標準偏差は,男性119±9/70±6mmHg,女性110±10/64±7mmHgであった。JNC-VI,JNC7では日中の覚醒時血圧が135/85mmHg以上,睡眠時血圧が120/75mmHg以上を高血圧と提唱している。また,1999年WHO/ISHのガイドラインおよびESH-ESC 2003ガイドラインでは24時間血圧125/80mmHgが外来血圧の140/90mmHgに相当するとしている。また,大迫研究を含む近年の国際協同データベースによれば,24時間のABPの基準値は130/80mmHg,昼間ABPの基準値は140/85mmHg,夜間ABPの基準値は120/70mmHgであった。以上のような報告より,24時間ABPM平均値で130/80mmHg以上の場合には高血圧として対処する異なる測定法における高血圧基準(mmHg) | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 診察室血圧 | 140 | 90 | 家庭血圧 | 135 | 85 | 自由行動下血圧
24時間 昼間 夜間 | 130 135 120
| 80 85 70
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また昼間ABPM平均値で135/85mmHg以上,夜間ABPM平均値で120/70mmHg以上を高血圧とする基準は,ESH-ESC 2007ガイドラインと同様である。 近年ABPMの短期変動性の増大が心血管病の危険因子となることが明らかにされ,ABPMの新たな臨床的意義として注目されている。ABPMは2008年4月より保険適用となったことから,より広汎な使用とその診断,治療における役割が期待されている。
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