高血糖が長く続いた状態が糖尿病であり、そのままにしておくと目や神経、腎臓などを傷め、さらには動脈硬化から脳卒中や心筋梗塞といった命にかかわる病気も引き起こします。高血糖とは、私たちの体を動かすエネルギー源である炭水化物などの栄養素が体内で変化したブドウ糖が、作られすぎたり、十分に使われずに血液中にあふれている状態です。
この血液中のブドウ糖の量を表すのが「血糖値」で、食事をとれば誰でもある程度は血糖値が上がります。健康な人の場合は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが食事に合わせてすぐに分泌されるため、血糖値はそれほど上がらず、しかも短時間で下がって元のレベルに戻ります。 しかし、糖尿病の患者さんやその予備群の人の場合は、食事をしてから十分な量のインスリンが分泌されるのに時間がかかり、しかも効き目が弱いこともあるため、食後、大幅に血糖値が上昇してしまいます。食事をしてから2時間後に測った血糖値が140mg/dl以上である場合を「食後高血糖」といいます。
ただ、糖尿病の早期の段階などでは、食後に血糖値が大幅に上昇するものの、空腹時には正常域まで下がっています。しかし、糖尿病のもっとも一般的な検査は空腹時血糖値の測定であり、食後高血糖かどうかは判断できません。つまり、空腹時に測った血糖値が「正常」というだけでは安心できないわけです。食後高血糖を診断するためには、「食後2時間血糖値」や「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」などの検査値が有効です。 実際は食後高血糖なのに気づかず、「空腹時血糖値は正常なんだから…」とそのままにしていると、やがて空腹時にも血糖値が高いままとなってしまいます。さらに、食後高血糖だけでも長く続くと動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気のリスクも高まることが、多くの調査研究で明らかになっているのです。
食後高血糖は大血管疾患のリスクを高め、がんや認知機能障害とも関連 東京大学の門脇孝教授が15年前(1994年)に、空腹時血糖値が120mg/dl未満(*)にコントロールされている糖尿病の患者さんに、毎食後、自己測定で血糖値を測ってもらったところ、食後1時間や2時間の血糖値が200mg/dl以上になっているケースが続出しました。
国際糖尿病連合(IDF)による2007年版『食後高血糖の管理に関するガイドライン』でも、下記のような事項は科学的な根拠(エビデンス)が明らかであるとして、「食後高血糖は有害で、対策を講じる必要がある」と明記しています。
●こんなに危ない食後高血糖 (1)脳卒中や心筋梗塞など(大血管疾患)のリスクを高める。 (2)糖尿病網膜症の発症リスクの上昇と関連する。 (3)頸動脈の血管壁(内膜中膜)が厚くなる(動脈硬化が進む)ことと関連する。 (4)動脈硬化などの引き金になる活性酸素の働きの活発化(酸化ストレス)、血管の炎症、血管壁の働きの低下、の原因になる。 (5)がんの発症リスクの上昇と関連する。 (6)高齢者の認知機能障害と関連する。
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